家の部屋や学校の教室には明かりを取るために窓がほしいですよね。建築基準法では、居室においては採光の為の窓を設ける基準があります。必要な窓の大きさは、部屋の用途や広さ、また、建設地の用途地域によっても変わってきます。
建築基準法では必要な窓の大きさを算定する方法が書かれてあります。ここではその算定方法についてお伝えします。
居室には採光のための窓が必要
住宅の寝室や居間、学校の教室など、「居室」においては採光の為の開口部(窓)を設けなければならないという基準があります。例えば、住宅の居室では、その部屋の面積の1/7以上の大きさの窓を設けなければいけません。住宅以外の「居室」に関しても、基準法施行令19条でその割合が定められています。
居室には採光のための窓が必要。ただし、あくまで「居室」なので、居室でない部屋、例えば便所や浴室、納戸など、これらは居室ではないので、窓は必要ありません。もちろん、設けることは問題ありません。
ちなみに、天井の高さに関する基準(必要な高さ)も居室に対してのものです。居室でない部屋については、この基準は適用されません。
採光に必要な開口部(窓)の床面積に対する割合【令19条】
居室の種類に応じて、必要な窓の大きさが変わります。部屋面積に対する必要な開口部(採光のための窓)の大きさは以下の通りです。
居室の種類 | 部屋面積に対する必要な開口部面積の割合 | |
(1) | 幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校又は幼保連携型認定こども園の教室 | 1/5 |
(2) | 保育所、幼保連携型認定こども園の保育室 | |
(3) | 住宅の居住のための居室 | 1/7 |
(4) | 病院、診療所の病室 | |
(5) | 寄宿舎の寝室、下宿の宿泊室 | |
(6) | ・児童福祉施設等の寝室(入所者が使用するものに限る) ・児童福祉施設等(保育所を除く)の居室のうち、入所者、通所者に対する保育、訓練、日常生活に必要な便宜の供与等の目的のために使用されるもの |
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(7) | (1)以外の学校の教室 | 1/10 |
(8) | 病院、診療所、児童福祉施設等の居室のうち、入院患者、入所者の談話、娯楽等の目的のために使用されるもの |
例えば住宅の場合ですが、(3)を見てみると、その部屋の面積に対して1/7の面積の窓が必要ということがわかります。居間の面積が28m2だとしたら、その1/7は4m2なので、4m2の大きさの窓が必要ということになります。この場合、1つの窓である必要はありません。2つや3つなど複数に分かれていてもその合計が4m2以上でしたら大丈夫です。
そして、この窓は「採光上有効な窓」である必要があります。 ここが重要
採光上有効な窓とは?
例えば、窓を開けたすぐ目の前がこのような隣の建物の壁になっていたらどうでしょうか?
窓を設けても部屋はあまり明るくなりませんよね。そこで、隣の敷地とは適切に離してくださいという決まりがあり、その計算式が規定されています。その計算を行なうことによって、その窓は有効なのか無効なのか、有効な場合は何m2が有効なのか、その有効な部分の面積を求めることができます。
ちなみに、計算結果によっては、実際の窓の大きさよりも大きな値となる場合があります。その場合は大きくなった分、有効な面積として大丈夫です。ただし、上限は3倍までと決められています。
例えば、計算結果が2となる場合、仮に実際の大きさが2m2の窓でしたら、×2で4m2有効ということなので、住宅の居間でしたら、逆算によりその7倍の28m2の居間を計画することができます。計算結果が3以上となる場合は、×3で6m2有効ということなので、その7倍の42m2の居間を計画することができます。
ではその計算、どのようにして行なうのでしょうか。
有効面積の算定方法【令20条】
採光有効面積は、
「開口部の面積×採光補正係数」
によって求めます。窓の実際の大きさに係数を掛け合わせます。その係数である「採光補正係数」ですが、下表の計算式によって求めることができます。用途地域によって計算式が違うのが特徴です。
用途地域 | 採光補正係数 | 限界条件(Dの値) |
住居系地域 | D / H × 6 - 1.4 | 7m |
工業系地域 | D / H × 8 - 1 | 5m |
商業系地域 指定のない区域 |
D / H × 10 - 1 | 4m |
D:窓の上の突出した建築物の部分から隣地境界線までの水平距離
H:突出した建築物の部分から窓の中心高さまでの距離
※「D/H」を「採光関係比率」と言います。
商業系地域にある住宅の1階の部屋の場合
例えば、Dが1.35m、Hが4.5mとすると
1階の採光関係比率「D/H」は、1.35/4.5=0.3
商業系地域の採光補正係数は D / H × 10 - 1 で求めますので
0.3×10-1=2 となります。
実際の窓の大きさが4m2とすると、採光有効面積は、開口部の面積×採光補正係数なので、4m2×2=8m2
住宅の場合は、部屋の1/7の大きさの窓が必要なので、逆算すると、有効採光面積8m2の7倍の56m2の広さの部屋が計画可能という事になります。
それ以上の大きさの部屋を計画したい場合は、実際の窓の面積を大きくしたり数を増やしたりするか、Dの距離を大きくすればいいということになります。
表中の限界条件とは
建物の高さがとても高くなる場合、つまりHの値が大きくなる場合は、Dの値を相当大きくしないと採光補正係数が1より小さい値もしくはマイナスとなってしまいます。その場合、Dを限界条件の距離以上確保すれば、採光補正係数が小さくなっても1でいいですよ。と決められています。
採光に関するその他の決まりごと
採光補正係数が3を超えた場合は3を上限
採光補正係数を求めた結果が4や5になった場合、実際の窓の面積の4倍や5倍を有効にすることができるかと言うと、それはできません。3を超えた場合は3が限度となります。
ふすまや障子などで仕切られた部屋
ふすまや障子など開けた状態を保つことができる建具で仕切られた部屋がある場合で、片方の部屋に窓がない場合、仕切られたその2部屋は1つの部屋として計算をすることができます。
天窓を設けた場合
天窓は側窓(壁にある窓)よりも光を多く取り入れることができますので、天窓を設けた場合は、計算結果を3倍にすることができます。ただし、上限は3までです。
開口部が隣地ではなく道路に面している場合
開口部が隣地ではなく道路に面している場合は、計算結果が1未満になっても1にすることができます。道路には何も建つことがありませんので優遇されています。ただ、計算する時のDの値は道路の向こう側の境界線から測ることになりますので、1未満になるケースは少ないと言えます。
開口部の外側に縁側(幅90㎝以上)がある場合
開口部の外側に縁側(幅90㎝以上)がある場合は、少し明かりが入りにくくなりますので、計算結果は0.7倍となります。
マンションの広告などを見ていると、「2LDK+S」という間取りがあったりします。2は寝室の数ですが、Sは何でしょう?
このSは、サービスルームを意味します。納戸程度の広さの場合もありますが、普通の寝室の広さの場合もあります。採光のための開口部を設けることができない場合や有効面積が不足する場合は、寝室(居室)として扱うことができないので、寝室ではなくサービスルームとしているのです。