本記事では、鉄筋コンクリート造について、その特徴をお伝えします。
鉄筋コンクリート造/鉄筋とコンクリートの相性
コンクリートは硬くて強い材料ですが、圧縮、引張、曲げ、せん断の4つの中だと、圧縮にとても強い材料と言えます。他の3つに対しては、実はそれほど強くありません。例えば、引張力は圧縮力の1/10ほどと言われています。
そんなコンクリートに対して、鉄筋は引張力がとても強い材料です。この引張力に強い鉄筋をコンクリートの中に配置させることによって、全体で、曲げやせん断力にも強い構造が出来上がるのです。
つまり、鉄筋コンクリート造は、鉄筋とコンクリートのそれぞれの長所を活かし、反対に短所を補うことができる構造と言えます。
鉄筋コンクリート造の特徴
鉄筋コンクリート造の特徴を挙げてみます。まずは長所です。
- 剛性が高い(大きい)・・・変形しにくい
- 耐久性が高い・・・長持ちする
- 耐火性が高い・・・火(火災)に強い
- 自由な形状にできる・・・もちろん限度はあります
では、短所には何があるでしょうか。
- 重量が大きい(重たい)
- 工期が長くなる(その分費用もかかる)
工期が長くなるのは、コンクリートが固まるのに時間がかかるのが理由ですが、あらかじめ工場でコンクリートを固めておいてそれを現場で取り付けるといった工法を採用することで解消することもできます。これをプレキャストコンクリート工法と言います。
鉄筋コンクリート造の種類
次に、鉄筋コンクリート造には主にどのような種類があるのかを見ていきましょう。
鉄筋とコンクリートで作る構造体ですが、作り方によっていくつかに分類されます。
ラーメン構造
柱と梁をメインの構造部材とし、これらの部材が剛接合によって接合されている構造。
ラーメンはドイツ語です。
剛接合とは、部材同士が一体化するようにしっかりと接合された接合の方法。部材が変形したり破壊したとしても、接合部は変形しないと考えます。
剛接合ではない接合の方法としては、ピン接合があります。ピン接合の場合、接合部分は回転することができます。例えば、柱と梁の接合部分において梁が動いた場合でも柱は動きません。
シェル構造
曲面内応力を用い、薄い曲面(屋根など)をつくる構造。
シドニーオペラハウス
JFK空港
壁式構造
柱や梁がなく、耐力壁とスラブで構成された構造。上からの荷重は、柱の代わりに壁が請け負うことになります。
ラーメン構造では、壁から柱型、天井からは梁型が出てくることがありますが、壁式構造ではそれがありません。ただし、壁の配置が一定量必要なため、ラーメン構造よりも空間に制限ができると言えます。
フラットスラブ構造
梁を持たず、床スラブや屋根スラブがなく、床にかかる荷重をスラブから直接柱に伝える構造。
梁がないため、階高を低くおさえることができるというメリットがあります。
鉄筋について
鉄筋には、丸鋼と異形棒鋼があります
鉄筋は、丸鋼と異形棒鋼がありますが、現在では主にコンクリートとの付着が大きい異形棒鋼が用いられています。
鉄筋は、コンクリートの中に適切に配置させる必要があります。特に、引張応力を受ける部分に重点的に入れるようにします。
丸鋼 SR235 SR295 など 太さは、φ19と表します。 |
異形棒鋼 SD345 SD295A など 太さは、D19と表します。 |
鉄筋の種別に用いられている数値は、降伏点の下限値(N/㎜2)を表しています。
付着とは、一般には物と物がくっ付くことを言いますが、建築においては、鉄筋とコンクリートのことを言うことが多い。
降伏点とは、鉄筋に力を加えていったとき、鉄筋の変化が急激に増加し、元に戻らなくなる時の力の大きさ。
コンクリートについて
コンクリートは、セメント、水、粗骨材、細骨材などの材料を混ぜて作ります。
粗骨材は砂利、細骨材は砂のこと
コンクリートは、材料を混ぜた時はまだ流動性があり、時間の経過とともに硬化していきます。組み立てる型枠の形状によって一体的に自由な形に作ることができるのがコンクリートの特徴です。
セメントは、水と化学反応をおこして硬化する材料です。これを水硬性材料と言います。
コンクリートの材料は
・セメント ・水 ・粗骨材(砂利) ・細骨材(砂) +混和材料
モルタルの材料は
・セメント ・水 ・細骨材
水セメント比
水セメント比とは、セメントに対する水の重量比で、水/セメント (%)で求めます。体積ではなく重量比なので間違えないようにしてください。
ちなみに、水に対するセメントの重量比は、セメント水比と言います。
水セメント比が大きいコンクリートほど、乾燥収縮量が多くなる。
鉄筋比とは
鉄筋比とは、コンクリートの断面積に対する鉄筋の断面積(合計)の割合です。
柱や梁、壁、床など、それぞれの部材について求めます。
鉄筋のかぶり厚さ、あき、間隔
かぶり厚さとは、コンクリートの表面から一番外側の鉄筋までの距離を言います。かぶり厚さをきちんと確保しないと、コンクリート本来の強さが発揮できず、また、鉄筋が露出することによって、錆びやすくなったりする被害が起こります。かぶり厚さは、部材や場所によって寸法が決められています。
鉄筋のあきは、鉄筋表面の内側から内側までの寸法を言います。
鉄筋の間隔は、鉄筋の中心から中心までの寸法を言います。
鉄筋の定着、フック
鉄筋は、部材から簡単に離れたり抜けたりしては意味がありません。そのため、所定の長さを相手側部材のコンクリートに埋め込むようにします。これを定着と言い、定着する長さには決まりがあります。
フックも同じです。鉄筋が抜けないよう、また、外れないように鉄筋の先端に折り曲げ部分を設けます。これをフックと言います。
鉄筋の継手
鉄筋を継ぐ部分を継手つぎてと言いますが、継手の方法にはいくつかの種類があります。主には、重ね継手、ガス圧接継手、溶接継手などです。
重ね継手
重ね継手は、2本の鉄筋を重ね合わせ、結束線で結ぶようにします。
D35以上の異形鉄筋には、原則として重ね継手は採用してはいけません。
重ね継手の継手長さは、鉄筋の径より求めますが、径が異なる場合は、細い方の鉄筋を基準とします。
例えば、D22とD25の鉄筋を継ぐ場合で、継手長さが40d必要な場合は、22×40で、880㎜の継手長さとなります。
ガス圧接継手
ガス圧接継手は、鉄筋の端面同士を突き合わせ、その部分を加熱しながら圧縮力を加えることによって継手を形成する方法です。
継手が隣り合う場合は、弱い部分が集中しないように位置をずらして設けるようにします。
溶接継手
溶接継手とは、鉄筋端部を溶接することによって接合する方法。
鉄筋コンクリート造に関する用語
つり合い鉄筋比
梁などにおいて、圧縮側のコンクリートと引張り側の鉄筋が同時に許容応力度に達する時の引張鉄筋比。
つり合い鉄筋比以下の場合、許容曲げモーメントは、引張り鉄筋の断面積に比例する。
ヤング係数
応力度とひずみ度との関係
クリープ
長時間荷重がかかることによって、物体が変形していくこと。
長い年月が経つと、床や梁が下にたわむことがあります。本棚のたわみ、これもクリープです。